長く、日本のキッチンはフラット形状の扉が流行し続けました。
シンプルでミニマルな意匠表現に適しており、印刷系化粧板を使って多種多様な色柄の展開も容易。
少ない工数で製造出来るため、際限のないコストダウン競争が必要なローコスト市場においては当然の結果とも言えるかもしれません。
その結果、常に取捨選択の判断を迫られる弱肉強食の工場運営において、多くの木工所やキッチンメーカーでは手間暇のかかる框組(かまちぐみ)の技術を捨てていきました。
当然の如くわれわれ福山キッチン装飾においても框組扉の生産を行わない日が増えていき、何度も「捨てようか」という議論が起こります。
経営上は稼働率の低い設備を廃棄することスペースを確保し、その時代に合った、今求められるものだけを追求・注力する姿勢が正しいのかもしれません。
しかし社内で同様の議論が巻き起こる度に必ず誰かが言い出します。
「他所がやらないからこそ、続けよう」と。
一度技術を捨ててしまうと、丈夫で美しい框組扉は容易に復活させることが出来ない事を理解していたからこその判断であり、流行は繰り返していく事実も潜在的に分かっていたと思います。
そして今日、ようやく框扉の存在が立派に経営を助けるまでに復活。
短期的な利益の追求も重要ですが、事業永続の為には長期的な目線で判断することの大切さを実感しています。
但し、旧態依然としたモノづくりの姿勢に拘るだけではなく、常に最新の技術・情報へブラッシュアップが必用です。
そして、当然の如くブラッシュアップ自体も基盤が無ければ出来ないわけですからモノづくりは本当に深い。